職場を出て左に曲がると、十字路に差し掛かる。大通りを横断するための信号はなかなか青に変わらず焦ったい。
俺はいつものようにカナル型イヤホンを耳にはめ込み、スマートホンを開く。いつだったか、アプリが散らかっていたため嫌気がさした時に整理したホーム画面の「SNS」と書かれたフォルダーからYouTubeのアプリを開く。
どの動画を見ようか、YouTubeが俺の視聴履歴から選出したおすすめの動画の中から特に興味もいが、アニメに詳しいメガネをかけた男が、相談者の悩みに答えるという動画を開く。
いつのまにか信号が変わり、仕事終わりであろうサラリーマンたち、料理がはいっているであろう大きめのリュックを背負い自転車に乗った青年、ベビーカーを引く外国人女性が一斉に横断を始める。
自分で見始めた動画だが、画面を見ずに音声も特に気に留めずまっすぐに歩道を進む。アーケードを5分ほど歩き進めていくと駅に辿り着ける。途中に大きなスクランブル交差点があり、斜向かいに進んでまた同じ方向へと歩く。
駅前にたどり着くと、大きな音が自動扉の中から漏れ出す建築物が現れる。
目を引く煌びやかな電光掲示板、なにかしらの広告のようだが、そちらには目もくれず、景品交換所のある方面とは反対側のドアから、どうやらその日は負けてしまったであろう中年男性とすれ違いながら店の中に入る。
俺が台を選ぶ時に最近特に気にしているのは、その台がどのくらいのメダルを吸い込んでいるか、つまり前任者がどれほど負けているのかという基準だった。
確証はないが、数回単発を繰り返した台は、上乗せの性能が格段に上がる傾向があるようた。自らの経験から導き出した攻略法とは呼べないオカルトだった。
そうして、座った台のサンドに一万円を入れて実戦をスタートさせる。
よしよし、投資四千円で初当たりゲットだ。
そのまま2回ほどボーナスを引くことができた。結果500枚ほどの枚数のメダルを獲得し終了した。このまま帰れば、六千円ほどプラスで終えられる。
しかし、昨日六万円ほど失った状態であったため、このまま終わることはできない。更なる出玉を求めホールを徘徊した。
三時間後、財布からは五万円が消え、昨日と合わせ11万円を失っていた。
これが、俺の日常の風景。
この国ではそこそこありふれた風景だろうが、個人単位で見れば11万円は大金であるに違いない。解消しようとしたストレスと喪失感、そして自己への嫌悪感を抱きながら帰路に着く。
いったい俺が何をしたというのか。自分が招いた結果であることを忘れ、ついつい神のせいにするのは罪深いことだろうか。
飲み会終わりであろう上機嫌なスーツの集団が、殊更に羨ましく思えた。
月明かりに照らされた黒い雲が、暗澹と動いていた。

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